マグニトゴルスクアリーナのd&b
ロシアにあるマグニトゴルスクの町は、スターリン計画によって急速に発展を遂げて、20世紀には驚異的な近代産業主義となった典型的な町です。町名がそのまま「鉄鉱山脈の町」となっているこの町は、カザフスタンとの国境近くにあります。 この町に新しく作られた多目的アリーナ、Metallurgアリーナはこの町地元のアイスホッケーチームの本拠地です。フルサイズのホッケーリンクと試合時に7500人収容し、ホッケー以外のコンサート時には15000人を収容する客席があります。このプロジェクトはLemconコンサルタント社のPekka Halonen氏の指揮の元、フィンランドの会社の企業共同体によって建設されました。BGMシステムとPAシステムはヘルシンキにあるSoundata社がd&bの設備仕様製品を用いて設計と施工されました。 現場での指揮は同社のJuha Tamminen氏が担当しましたが、どのような手法を取ったのかについて説明してくれました。「d&b audiotechnik のスピーカーとアンプによって構成されるシステムにしましたが、これがシステムの最も重要なポイントです。機種はスピーカーがQi7とCi90を採用し、全てのアンプはd&b D12アンプで統一してそれをd&b R1リモートコントロールソフトウェアで制御するシステムとしました。 長方形の客席の幅の狭い客席二面のエリアはQi7を使用し、幅の広い二面エリアにはより広い指向特性が必要なので4カ所にCi90ラウドスピーカーを配置してカバーしています。幅の狭い客席の片側には2階席があるため、さらにQi7が4台使用されていますのでそちらの客席には、合計8台のQi7を使用し、もう一方の客席には4台のQi7を使用しています。そしてリンクの中央上部にあるスコアボードと映像システムの下に4台のCi90がクラスター状に真下のリンクを向けて吊下げてあります。これは観客のためではなく、氷上でダンスを行ったりする場合のモニター用途に使用します。」これらの d&bシステムはアリーナの緊急非常放送用途も兼ねており、緊急時には自動的にそちらが優先されるようになっています。 Soundata社はこのほかにもコントロールルームの機器とインカムシステムも設置しました。ミキシングコンソールはAllen&HeathのGL2400-24、アナウンス用マイクにはbeyerdynamicのMTS67/3が採用され、モニターにはGenelecの8030Aが設置されています。外部のオーディオソースはDenonのCDとDVDプレイヤーとジングルとアナウンスが360システムのInstantReplayユニットに保存されています。Tamminen氏によれば、これらは簡単にプログラムでき、柔軟性によって選択されたということです。 d&bシステムを選んだ理由は第一にその信頼性だということです。「我々は、以前同じシステムをヘルシンキのオリンピックスタジアムに納入した経験がありました。その時は野外ということもあり耐天候仕様のCi90でしたが、ここでは標準仕様のCi90が設置されています。アイスリンクで大きな問題となるのは、寒さでは無くアリーナの天井付近の湿気でしたが、問題なく対応できています。」すべてのシステムはデジタル制御され、アンプとスピーカーの作動状況はコントロールルームにあるPCのd&b R1リモートコントールソフトウェアから監視されています。DSPはBSS Soundwebと8イン8アウトの9088プロセッサーで形成されています。 中央の映像システムはDarepro社が納入しました。このシステムは四面に8.5平方mのLEDスクリーンが配置されており、製造は同社の親会社であるDarekonグループが行いました。スクリーンは8mmピッチのV8製品です。これを制御するソフトウェアはDarespo社がデジタル化し、Barcoのソース切り替えを用いています。映像スクリーンの下にはDarespo社製の4つのスコアボードが下げられ同社製のソフトウェアで制御されています。そしてその下にd&b Ci90のクラスターが氷上に向けて取り付けられています。 最後にTamminen氏はこのプロジェクトで難しかった事を振り返って説明してくれました。「実際に最も難しかった点は、ロシアに機材を輸入することと人材の確保でした。このプロジェクトは我々が初めてロシアで行ったプロジェクトで色々なことを学び良い経験となりました。輸入する全ての機器の一つ一つに承認が必要で、輸入する度に新たに承認が必要なのです。従ってアクセサリーやケーブルまで全てを一気に行う必要があり、また一度輸入したものを持ち帰ることができないため全てを現場で使用してしまうか、置いてくるしかないのでプランニングに非常に時間をかけ、念入りに行う必要がありました。」 Story reproduced with kind permission of InAVate