BorsatoのWit Lichtショーがラテン、ポップ、ロック、ジャズの融合を魅せる
日々目まぐるしく変化するポップ音楽の世界では、ニーズに応じたアイデアが求められます。2006年からオランダのArnhemにあるGelreドームでスタートして記録的な動員を定例のMarco Borsatoコンサートキャンプは一晩で32000人を集めて10日間行われていますが、その彼が2008年末に6日間行った「Wit Licht」では変化しながらも不変な核心を垣間見ることができます。 「PAシステムはPeak Audio社から供給されたd&b audiotechnikのJ-Seriesラウドスピーカーで全てが構成されています。システムデザインは同社のオーナーWill-Jan Peilage氏と私のシステムテックPaul van Baasbank氏と私で行いました。」と語るのはBorsatoのハウスエンジニアBarak Koren氏です。同氏はBorsatoのスタジオワークもこなしていますので、このような長期間同じ場所で行われるショーには理想的と言えます。このようなショーでは比較的時間に余裕があるためCDに録音された演奏を忠実に再現できることができるからです。しかしGelreドームはサッカー場です、CDの再現には難しかったのではないでしょうか?「最初の目標はメインシステムからの音がステージに来ないように設置するようにデザインしました。これによって例えこのような大きな会場でも良いレベルに到達することができます。」 同氏はそのように簡単に言いますが、ステージ両サイドにメインシステムと幅が広大な会場のためアウターシステムの合計4アレイ、そしてフィールドの中間地点とステージ両端のグランドスタンド前部に合計4アレイのディレイとJ8とJ12が100台以上となるシステムになります。これらのシステムが設置されたらPaul van Baasbank氏がシステムチューニングを行います。その彼がKoren氏が目標とするメインシステムからの音が回り込まないクリアなステージサウンドについて説明します。 「フライングされたシステムのすぐ近くのスネークの下にフロントフィルがあります。」同氏が「スネーク」と言っているのはBorsatoのショーの重要な2つの要素のうちの1つで客席内に伸びた非常に長い花道を意味しています。Koren氏がフォーカスするPAの音がステージに行かないという部分が少し見えてきたかと思います。「フロントフィルにはJ12を選択しました。これは殆どパワーは使用せず明瞭度を上げるために使用しています。J12にした理由はシステムとして非常にシンプルなハンドリングが可能なことと音の互換性を考慮した結果です。」スネーク部の形状によってJ12からの音をステージに漏らさずにカバーすることができないエリアが2か所できてしまいます。「そのエリア用にはd&bのC3が真上の20m以上の非常に高い位置にフライングされています。但しこれはタイトな指向制御がされているためステージへ音を漏らすことなくこのエリアだけを的確にカバーすることができています。」 このような大型の会場において慎重に制御をするように検討しないと暴走しがちな低域について述べられていないことを不思議に思われている方もいるかと思います 。その低域はメインシステムと同様にJ-SUBがフライングされているのに加えてBaasbank氏はフロア全体にJ-SUB アレイを配置しています。「これらは会場全体への指向性を形成するために使用しています。」これらを適切に行うための必要な配置については大よその想像はできていると思います。「サブウーファーをフライングすることは非常に効果的で会場の最後部まで行き届かせることが出来ながらカーディオイド特性によってステージをクリアに保つことができるため、私の仕事は客席内だけに集中することが可能になります。」 このショーはBorsatoの多彩なパフォーマーとしての資質によるラテン、ポップ、ロック、ジャズといったような音楽の融合の時に激しく、時に静かではありますが大音量なショーです。Koren氏はミックスのために中間地点でのディレイのミックスを考えるためにその音を聴きました。「PAには非常に満足しています。ディレイはステージのメインシステムと同じカーブ、同じ台数であるために特に何も変える必要はありませんでした。このシステムは今まで使用した中で唯一サブウーファーがメインシステムにマッチしており、私はJ-SUBの多大なるファンです。SUBの均質な拡散、ディップやローブのない拡散特性のためチューニングもクロスオーバーの設定を考える位でプランが容易です。ドイツの人たちは良い仕事をしたと思います。そのため欲しい場所にパンチのある音を届けることができます。Gelreドームは非常に難しい場所ですが実際にはそれほどでもなかったということを感じていただけだと思います。」これには約20万人のオランダのファンもきっと同意してくれるかと思います。