ルース・エッカード・ホール─SL-Seriesが会場を震わせる。
フロリダ州クリアウォーターにある歴史的な舞台芸術会場、ルース・エッカード・ホールは、このほど d&b audiotechnik SL-Series ラウドスピーカーシステムを導入し、オーディオ制作能力を大幅に強化しました。APAV Solutions社によって設計・設置されたこの新しいシステムは、同ホールで約20年使われてきたd&b C-Seriesシステムに代わり、今後も観客とパフォーマーの双方に最高の音響体験を提供し続けることを目指しています。
APAV Solutions社のCEO兼創設者であるCraig Beyrooti氏は、今回のアップグレードに至った背景についてこう語ります。「最近のツアー仕様ではインアレイが標準になっており、ホール側はたびたびポイントソースシステムを取り替える必要がありました。最高レベルの音響システムを求められており、d&b audiotechnikとは長年良好な関係を築いていたため、SL-Seriesへのアップグレードは自然な選択でした。C-Seriesのシステムで問題なかったのですが、導入から約20年が経っており、アップグレードのタイミングでした。」
アップグレードされたシステムは、卓越した音質、指向性制御、そして低域性能で定評のある KSL および XSL ラウドスピーカーと SL-SUB サブウーファーを組み合わせたものです。この構成により、ホール全体にクリアな音響カバレッジが実現し、不快な反射音を最小限に抑えながら、明瞭度を最大限に高めることができています。
今回のシステム導入は、新型コロナウイルスの影響によりSL-SUBの設置が遅れるなどの課題もありました。当初はサブウーファーがなかったにもかかわらず、ルース・エッカード・ホールの音響責任者であるPhilip Dunn氏は、新システムの並外れた低音域の性能とヘッドルームを高く評価しました。「システムを初めて設置し、最初にArrayCalcでシミュレーションしてシステムを構成し、音楽を流した瞬間、サブウーファーなしでもKSLとXSLだけでこれほどの低音が出るとは思いませんでした。これほどコンパクトな筐体でありながら、低域がしっかり伸びていて、60Hz付近まで余裕で再生されていました。」
さらにDunn氏は、ステージ上に届く低域エネルギーの少なさにも注目します。「特に感動したのが、ステージ上の低音エネルギーが非常に少なかったことです。これは、側面と前方に配置されたドライバーが連携して背面へのエネルギーを抑えながら、観客に向けてピンポイントでエネルギーを届けるという設計によるものです。早い話が、ステージ上が静かだとバンドは演奏しやすい。これがSL-Seriesシステムを選んだ決め手となりました。」
SL-SUBの導入により、システムの低域再生能力は一段と迫力あるものへと進化しました。「Heilung(ハイルング)は、このシステムを使用して演奏した初めてのアーティストでした。彼らはドラムを主体とした北欧のシャーマニズム音楽を奏でるバンドで、ライダーには最低8台のサブウーファーの設置が指定されていました。ただ、当時はSL-SUBを受け取ったばかりで、正式に運用を開始していなかったんです。でも、d&bの協力のおかげで、ショー直前に設置することができました。」とDunn氏は語ります。「公演の終わりに、Heilungのエンジニアは、『d&bのシステムは間違いなくこれまで聴いた中で最高のPAシステムだ』と言ってくれました。信じられないほど素晴らしかった。音楽が観客に“響く”だけでなく、オーディエンスは音楽を肌で感じ、建物全体が本当に共鳴していました。」
「新システムのもう一つの利点は、設置と撤去が容易であることです。SL-Seriesのラインアレイは必要に応じて素早く出し入れできるため、ツアー出演者が自前のシステムを使用する際にも便利です。「取り外してもすぐ元の位置に戻せるように、接続を簡略化するマルチピンと、再設置用の目印を取り入れています。」とBeyrooti氏は説明します。Dunn氏はさらに、「d&bシステムは1時間で撤去でき、2時間で再設置可能なんです。しかも、最小限のスタッフで対応できます。」と付け加えました。
Dunn氏はまた、ルース・エッカード・ホールの館内システムを採用したツアーアーティストとそのエンジニアにとっても、このシステムが高く評価されていることも言及しています。「d&b SL-Seriesシステムを採用したのは、“ライダー対応力”です。今は誰も疑問を持ちません。アクトが来場してサウンドチェックをすると、すぐに『問題ない、良い音だ』と納得してくれます。しかも、過去にこの会場で演奏したことのあるアーティストからは、必ず『この会場とシステム、本当に音がいいよね』というコメントをもらえるんです。」
ルース・エッカード・ホールに導入されたd&b audiotechnikの新しいラウドスピーカーシステムは、世界最高クラスの音質を来場客にお届けするための重要な投資です。d&b audiotechnik製品の採用とAPAV Solutions社との提携により、ルース・エッカード・ホールは、すべての来場客にイマーシブで忘れられないオーディオ体験を提供するというコミットメントを改めて表明しています。
「d&b audiotechnikのSLシリーズがある限り、私は一切の不安なくショーに臨めます。すべてがスムーズに進み、素晴らしい音が届けられると確信しています。」とDunn氏は締めくくりました。
システム設定について
APAV Solutions社は、左右両側に KSL8 (9台)とKSL12(3台)を左右それぞれにL/R構成で設置しました。センタークラスターは、トップスピーカーXSL12(6台)を設置し、その左右にカスタムフレームソリューションを用いて吊り下げたSL-SUB 各2台で構成されています。フロントフィルカバレッジは、既に設置済みだったポイントソーススピーカーE3 と、床置きの2台の SL-GSUBによって提供されています。V10P ラウドスピーカーもデッキアウトフローとして導入されました。