電子音楽アーティストMersiv、d&b audiotechnik SoundscapeとEn-Sceneを使用し、レッドロックス野外劇場でイマーシブなオーディオエクスペリエンスのパイオニアとなる

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先日、そのユニークで自然な音響と息をのむ風景で知られるアイコニックな レッドロックス野外劇場では、d&b Soundscapeと En-Scene によって実現した、電子音楽アーティスト Mersivの史上初のイマーシブなオーディオイベントが開催されました。   d&b audiotechnik、 Brown Note Productions、そしてAndrew Kirschman(Mersivのオーディオエンジニアであり、AKA Event Productionsの創設者)が画期的なコラボレーションをとり、 レッド ロックスの既存の SL-Series システムに V-Series スピーカータワーを戦略的に配置しました。歴史ある野外会場の全観客を巻き込む、音響による前例のない没入感が実現したのです。

デンバーを拠点とする電子音楽プロデューサーでありDJであるMersivは、ずっとレッドロックスでの公演を夢見ており、このアイコニックな会場での3回目の出演を機に、これまでにないことをしたいと考えていました。彼のアーティスト名であるMersivには、「今この瞬間の音に精神的・肉体的・霊的に完全に浸る」という願望が込められています。彼はこの音楽観をレッドロックスでのパフォーマンスで確実に表現することを目指していました。

Brown Note Productionsの創設者であるRyan Knutsonによれば、Mersivのチームは、レッドロックスでイマーシブなオーディオイベントをやりたいという強い思いを訴えてきたと言います。Brown Noteの音響技術者Matt Brownは、Mersivが目指すものを次のように説明しています。「彼の名前Mersivが示すように、このエクスペリエンスで彼らが目指すものを表すキャッチフレーズは『イマーシブ』でした。彼は最前列の客にも最後列の客にも同じように、クリエイティブでインパクトのある音楽エクスペリエンスを味わってもらいたかったのです。クラブにいるような体験を実現したいわけですが、レッドロックスは幅が400フィート、高さが100フィートもある巨大な野外会場なので、通常であれば、これを実現するのはかなり難しいはずです」

当初Mersivのチームは特別な設計を組み上げるつもりでしたが、Brown Note Productionsは、レッドロックスではまだ導入されていないd&b Soundscapeを試してはどうかと提案しました。 Knutsonは、レッドロックスのような広大な会場では、何らかの処理システムがなければ、基本的な設計だけでタイミングの問題を解決することはできないだろうと言いました。 

Brown Noteとd&bはSoundscapeの性能を実証するため、レッドロックスの13%のサイズの縮小版デモシステムを設置しました。そしてMersiv自身のステムもいくつか含めてコンテンツのA/Bテストを行い、4チャンネルサウンドとSoundscapeを比較しました。Mersivのチームは、Soundscapeソリューションが革新的なものであり、この特殊な環境にどれほど効果的に適応するかをすぐに理解したとKnutsonは語ります。 

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Soundscapeの導入が決定すると、今度は国立公園としてのレッドロックスの独特の形状と状況が設計上の大きなハードルとなりました。そのハードルについて、Brownは次のように述べています。「システムの設計と導入における最大の問題は、まさにこの会場のスペースにありました。これまで観客エリアにリインフォースメントが設置されたことはなく、またレッドロックスは国立公園なので、何をするにしても事前に許可を得る必要があったのです」

d&bのArrayCalcシミュレーションソフトウェアは、設計と最終的な許可には不可欠でした。「まずレッドロックスの細密なモデルを使って ArrayCalc でテストを行ってから、d&bを使用することで、ラウドスピーカーをどこに置けばSoundscapeの設置を最適化し、できるだけ侵略的でない方法で進められるかを決定できました」とBrownは語ります。「ArrayCalcは設計上の課題を解決する素晴らしいツールです。ArrayCalcなしでは、このスペースでの可能性を追求することはできませんでした」

また、チームは厳しい物理的な制約にも直面していました。Knutsonは次のように説明します。「8フィート四方のスペースにスピーカータワーを設置することが許可されましたが、レッドロックスには急な傾斜面があるため、スピーカーを機能させるには高い場所に設置する必要がありました。Soundscape導入のインパクトが十分に発揮されるシステムを設計し、立案し、その許可をもらわなければならなかったのです。d&bの V-Seriesである V8 ラウドスピーカーは、私たちの要件をすべて完璧に満たしてくれました」

レッドロックスは人の出入りが多い場所であり、現地リハーサルの時間が限られることもハードルとなっていました。システムの設計が承認されたので、Brown Noteは6日間のアーティストのリハーサルのために、社内でシステムの縮小バージョンをもう1つ作りました。「次にプログラミングに取りかかり、配置する平面をSoundscapeソフトウェアで調整してから、レッドロックスのサイズに拡大しました」とBrownは述べています。「Soundscapeでこれが簡単にできたおかげで、現地で時間をかけてプログラミングする必要がなくなったのです」。また、d&b ArrayProcessing を使うことで、高度が高いだけでなく湿度や温度の変動も激しいレッドロックスの過酷な環境条件をカバーして、一貫したサウンドを確保することができました。

パフォーマンスにあたっては、d&b SoundscapeとEn-Sceneソフトウェアを使用して、会場の至る所にサウンドオブジェクトを配置しました。Brownはそのクリエイティブなアプリケーションについて次のように述べています。「私たちはSoundscapeとEn-Sceneを使用して、会場全体に据え置き型のオブジェクトを配置しました。各タワーペアを左右に配置し、全観客が同等のエクスペリエンスを得られるようにしました」

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このイベントは各タワーのドラマチックな起動シーケンスから始まり、光やレーザーと同期した非常にイマーシブなオープニングが展開されました。Mersivはショー全体を通じて、個々のオーディオステムやエレメントを駆使しながら、En-Sceneを使ってそのコンテンツを会場内に届け、会場を包み込む光、映像、レーザーのエネルギーと一体化したオーディオエクスペリエンスを高めていました。Brownはそのエクスペリエンスについて次のように述べています。「サウンドが会場全体を動き、曲のさまざまな部分で効果を加えました。全体に大きなインパクトが生まれましたが、それを可能にしたのがSoundscapeだったのです」 

この成功は、2000年代にまで遡るBrown Note Productionsとd&b audiotechnikとのパートナーシップの賜物でした。Knutsonはd&bの一貫したサポートを称賛しています。「今回のイベントに際して相談したところ、d&bはあらゆる段階で私たちをサポートしてくれました。d&bの素晴らしいサポートのおかげで、初めてのSoundscape導入をスピーディーに進めることができました。私たちがd&b audiotechnikとの仕事を続ける理由がそこにあります。同社の高度なサポート、一貫性、そしてシステムの導入を容易にするための絶え間ない取り組みは貴重です」

今回のショーは圧倒的にポジティブな評価を受けました。Mersiv自身は次のように述べています。「フィードバックを見ると、ファンの皆さんはこれがレッドロックスでのコンサートの新しい基準になることを望んでいるようです。Soundscapeはライブコンサートの未来を示すものではないでしょうか」

Brownは設置の際のエピソードを生き生きと語ります。「第一印象から素晴らしいレッドロックショーになりそうだと感じましたが、Soundscapeシステムを試しにオフにしてみたところ、あまりに大きな違いがあって驚きました。Soundscapeのサウンドはあまりにも自然に聞こえるので、それを消すまではその存在を意識していなかったのです。そこで再びSoundscapeをオンにしました。そのときに、私は動きと空間化のすべての微妙なニュアンスをはっきりと認識しました。エンジニアとして初めての経験でした」。そして次のように締めくくりました。「私たちの最終目標は、イベントに参加したすべての人にとって忘れがたいエクスペリエンスを作り出すことであり、それについては目標を達成したと思っています。これは経験したことがない何か特別なものだったと、すべての人が感じながら帰ってくれたと私は思っています」

Knutsonは付け加えます。「Mersivのイベントが非常に良い成果を収めたことで、1か月後にはSkrillexからもオファーがありました。レッドロックスでのSoundscapeショーのことを聞いた人はみな、そこで同じようなエクスペリエンスを作り出したいと思うのです」 

システム構成について 

Brown Note ProductionによるレッドロックスSoundscapeの設置は、会場での標準のd&b audiotechnikシステムに基づいて行われました。メインシステムとして GSL8が8台、 その下方に GSL12が6台、 両サイドに天吊り SL-SUB が6台設置され、グラウンドSL-SUBが6台、フィルとして Y10P ポイントソースラウドスピーカーが4台、サイドフィルとして両サイドにV-Series V8が2台追加されました。客席のタワーにはVシリーズアレイが6台(タワー1台にV8ラウドスピーカーが4台ずつ)、ステージから60~290フィート離れた場所に100フィートずつ高さを変えて設置されました。システムはArrayProcessingを搭載した34台の D80 アンプで駆動し、En-Sceneソフトウェア搭載のSoundscapeには DS100 シグナルエンジンで起動しました。ネットワークは DS10 オーディオネットワークブリッジによって確立し、 R1 リモートコントロールソフトウェアで制御しました。

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