北京国家体育場で、ジェイソン・チャンとともに鳥の巣の頂点へ。
著名な中国のポップスター、ジェイソン・チャンは、先日北京で全12回のコンサートを開催し、新たな歴史を作りました。これらのコンサートを支えたのは、北京を象徴する国家体育場の天井から吊り下がる、先例のないd&bサウンドシステムでした。
Nanjing OST Audiovisual Technology、および伝説的なオーディオエンジニアのJin Shaogang氏を中心とするチームは、512台のラウドスピーカーからなる大規模なd&b SL-Seriesシステムを、同会場の特徴的な天井に126メートルにわたって張り巡らされたスチールケーブルから吊り下げました。これにより、2面舞台の本コンサートは、音楽面でもライブサウンドの面でも新境地を開くものとなったのです。
中国のスタジアムコンサートでオーディオがケーブルから吊り下がるように設置されたのは、これが初めての例です。
スタジアムの堂々たる建築設計をクリエイティブ上の課題と捉え、チームはラインアレイを天井の縁に沿って取り付けました。さらに、鳥の巣スタジアムの中央に設置された細い長方形のステージの上方には、ラウドスピーカーが同じく中央に吊り下げられました。
ステージ上空には、内側フィールドのアリーナ席と1階スタンドの中間・後方エリアをカバーする4組のGSL大型ラインアレイラウドスピーカーが背中合わせに吊り下げられ、側面部分を補う形で2組のSL-SUBアレイも吊り下げられました。2階および3階スタンド席には、6組のKSL中型ラウドスピーカーが天井の鉢形部に沿って吊り下げられました。ステージ沿いにはいくつかのSL-SUBサブウーファーが積み上げられ、フロントフィルはV-Seriesとモニタースピーカーでカバーしました。配置されたスピーカーの数は合計512台で、スタジアムでの一般的な3面舞台パフォーマンスで設置される数の約2倍に及びます。
こうした設計により、7万人のファンからなる観客全体がスタジアム内のステージ両側からスタンドの上部デッキにまで広がって着席し、ショーの視界を遮られることなく、夜ごとスタジオ音質のオーディオ再生を体験することが可能になりました。ジェイソン・チャンは、2004年にテレビ放送された歌のコンテスト My Show で優勝してキャリアをスタートさせた中国有数のポップアーティストで、現地では「張杰」として知られています。
音響における今回の偉業は、d&bの革命的なSL-Seriesを活用し、広帯域指向性制御によってクリアな高音域と完璧にフォーカスされた低音域をスタジアム全体に届けることで実現しました。システム内のカーディオイドSL-SUBサブウーファーが、高度なドライバーキャンセル機能によってステージ上のノイズを50%削減。さらにShaogang氏のチームは、d&bの高度なArrayProcessingテクノロジーを用いて、非常に大きな会場全体にわたって差異3dB以内の完璧に近い音圧レベルを維持しました。
Nanjing OSTでサウンドエンジニアリングプロダクションディレクターを務めるZhang Xiaonian氏は、 ArrayProcessingを利用することで、チームは従来のソリューションでは対応できなかったいくつかの複雑な課題に対処することができたと話しています。
元々は2008年のオリンピックのために建設された北京国家体育場の大規模な空間は、技術チームが克服すべき課題を複数もたらしました。 d&bのLoadMatchテクノロジーを用いて全長150メートルのケーブル全体で信号の完全性を保つことに加え、戦略的に配置された12台のKSLディレイシステムを同期させて、メインステージと、VIPボックスの遠く離れたミキシングポジションとの間で、完璧なコヒーレンスを生み出す必要があったのです。
また、特別な12回のコンサート公演に向けて、Zhang Xiaonian氏のチームはd&bのラウドスピーカーを最大限に生かすために、D40およびD80のユニットに加え、最新のD90アンプを特に選択しました。
Nanjing OSTが次世代のSL-Seriesの設置に大きな投資をしたことは、中国のライブイベント制作能力が飛躍的に前進したことを意味します。ジェイソン・チャンの観客は大規模なコンサートエンジニアリングにおいて新たな基準が確立するのを体験し、間違いなく今後も存続するようなベンチマークが打ち立てられました。