The Onassis A&L,街の新しい音楽の神殿

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価値ある物は世の中に多く存在しますが、値段を付けられないほど価値の高いものというのは、後世になって初めて評価されることがあります。City of Birmingham Symphony Orchestra(CBSO)を率いたSimon Rattle卿が1991年に証明してみせたように、クラシックが演奏されるコンサートホールの業界では、ホールの音響は演者であるオーケストラや指揮者と同じように大切な要素です。これ以降、多くの都市がCBSOの世界的な名声を手本にしようとしてきましたが、近年アテネにオープンしたOnassis House of Arts and Letters(Onassis A&L)もその一つと言えそうです。

「このような部屋は初めてでした」、そうThanassis Drossos氏は語ります。Thanassis氏は地元ギリシャでは名の知られた音響エキスパートであり、様々な施設で仕事をこなしてきた経験から、通常は音響の良し悪しに動揺を見せることなどありません。「音響デザインを務めたのはAlbere Xu氏(日系フランス人の音響学者)なのですが、彼の仕事は見事でした。 拡散音が調和する様は実に美しいものです。」ギリシャで高い評価を受けている技術スペシャリストであり、Onassis Theaterにおいてサウンド、証明、AVといったメディアインフラを一任されたTelmaco S.A.においてオーディオプロジェクト部門を率いるThanassis氏にとって、拡散音は一つの懸念事項でした。「しかし、この劇場は単にオーケストラやオペラだけではなく、ミュージカルや、ロックなどアンプを通したサウンドに至るまで、あらゆる演目に対応しており、素晴らしい柔軟性を備えています。」

こうした劇場には珍しく、当プロジェクトはデザインから建設に至るまで、かなりのスピードで行程が進められています。Telmacoが初めて入札を行ったのは2010年3月なのですが、その僅か10ヶ月後には劇場のオープンを迎えています。Theatre Projects Consultantsが執り行なった入札を勝ち取ったTelmacoは、プロジェクトのマネージメントを行うOnassis Foundation指揮のもとでプロジェクトに参加することになります。「これほど大きなプロジェクトですから、仕事に手を抜くわけにはいきません。TPCのTom Davis氏とRichard Borkum氏によって、インストレーションされる機材はd&b audiotechnikに決定され、その後Telmacoがデザインの手直しを担当、メインシステムにはd&b audiotechnik T-Seriesが主に使用されることになりました。左右とセンターに機材を据え付けたシステムは部屋を上手くカバーしており、取り外しも素早く簡単ですし、3層のプロセニアム用のセンタークラスター、あるいはLCRシネマシステム用にスクリーン裏に設置するといった異なるサウンドデザインにも容易に対応できます。」

メインコンサートホールは880人を収容し、2つのバルコニーを備えた伝統的なシューボックス型のホールとなっています。プロセニアムを省いたスタジオスタイルの「black box」シアターは220人を収容し、Telmacoによってd&b E-Seriesシステムが導入されています。「メインコンサートホールでは、PAシステムはほとんど必要ありません」、そう語るのはAV&照明部門を率いるVassilis Kyriazis氏。「これほどのキャパシティーを誇り、天井の高い劇場では珍しく、体感ボリュームは相当な大きさです。このボリュームと、Xu氏がデザインした部屋を横切るディフューザー(部屋を横切る巨大な鉛筆を想像してください)によって、拡散音は垂直方向には天井に到達し、そして水平方向にもホール内をスムーズに拡散するのです。自然残響は1.5秒を切っています。」

Onassis A&Lは2010年12月にオープンを迎えました。アクロポリスのすぐそばに位置するこの建築のエクステリア(Architecture Studioによる設計)は、決して歴史的な建築物と張り合うことはしません。大理石による水平なブラインドで覆われ、夜になると見られるキラキラと輝く姿は、建築家がGolden Eggと表現した理由を確信させます。内側も外側も、建築的にも音響的にも優れるこのような施設は、値段を付けるのが本当に難しいものです。

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