さらば青春の光 全国ツアーにCCLシステム導入
お笑いコンビ「さらば青春の光」の全国ツアー『八百長』にて、CCLシステムが採用されました。全国12都市を約5ヶ月で巡るこのツアーは、総動員数約4万人の大規模公演。舞台は全編コントで展開され、芝居に近い自然な演技と、幕間の音楽にもこだわったライブが特徴です。今回は、ツアー初年度から音響を担当している株式会社大城音響事務所の大城様・西川様・関山様に、CCL導入の背景や現場での使用感についてお話を伺いました。
今回のツアーでCCLシステムを採用された理由や決め手は何でしたか?
大城:弊社へのCCL導入はこのツアーでの使用を前提に検討していました。「さらば青春の光」のツアーは今年で8回目になるのですが、初年度からT-Series、3年前からY-Seriesを使用していました。CCLが登場したとき、Y-Seriesより一回り小型でパワーもあると聞いて、「これはちょうどいい!」と思いました。決め手はカーディオイド特性です。別の現場でSL-Seriesのキャンセリング効果を実感していたので、CCLにも同様の効果を期待しました。このツアーではマイクを頭につけて芝居のように進行するため、ハウリング対策が重要になります。カーディオイド特性で背面への音の回り込みを抑えられるので、ハウリング対策にもぴったりだと思いました。また、コンパクトさと軽さも大きな利点です。会場によってはスピーカーの存在感を抑えたいという要望も多く、今回は1台のトラックで全国を回るため、運搬面でもCCLは最適でした。実際に初めてCCLをトラックから下ろしたとき、制作サイドから「今回のスピーカーはちっちゃいですね」と言われました。
ツアーで実際にCCLを使用されてみて、導入前のイメージと比べて印象はどうでしたか?
大城:イメージ以上でしたね。一番は音質が想像以上でした。特に音質の高さと高域の耳あたりの良さには驚きました。高域が落ち着いていて、とにかく耳に優しい。これは実際に使ってみて、かなり衝撃的でした。
運搬面でも、弊社はワンボックスカーでの移動が多いので、2人で無理なく扱えるサイズと重量は大きなメリットです。それから、サブウーファーのローエンドの出方も印象的でした。Y-SUBよりも再生帯域の下限がしっかり出ていると感じ、低域の伸びにも驚きました。
お笑いライブで、持ち込みのスピーカーを使うのは珍しいケースかと思います。このライブならではで特に気をつけているポイントがあれば教えてください。
大城:さらば青春の光は、以前は漫才も行っていましたが、現在は全編コントで構成されていて、芝居に近い自然な演技が特徴です。“演技の中に笑いを織り込む”ようなやり方で、芝居として自然に見せることがとても重要です。小声やつぶやきのセリフも多く、まるでドラマの収録をしているかのような繊細な演技をします。
そのため、演者の声を自然に拾い、明瞭に拡声できることが何より重要です。こうした現場では、ハウリングマージンの調整も非常にシビアになりますし、小音量でも再現性の高いスピーカーが求められます。環境音やSEも含めて、自然なバランスで声が乗ることが大切で、その絶妙なバランスを実現することが重要だと、いつも思っています。
セットアップやチューニングのしやすさなどで感じた点はありましたか?
西川:最大の魅力は軽さですね。今日は5本吊っています(※関内ホール公演時)けど、基本的に本ツアーでは6本でスタックしています。Y-Seriesだと1本20kgほどあるので、上段まで上げるのは1人では大変です。その点、18kgを切るCCLなら1人でも作業できるレベルで、女性にも扱いやすいと思います。他のd&b製品と共通の仕様も多く、倉庫での積み込みもスムーズでストレスなく行えました。
関山:カートの使いやすさも非常に実感しています。セットアップが簡単です!
大城:これまでY-SeriesやV-Seriesのカートを使ってきましたが、KSLやGSLのようなツアー仕様のカートも見ていて「格好よくて使いやすそうだな」と感じていました。今回のCCL用カートは、まさにそれらの“いいとこ取り”。これまでのd&bのノウハウが詰まった、完成度の高い仕上がりだと思います。
今後CCLが活躍しそうな現場や、相性が良さそうなシチュエーションがあれば教えてください。
大城:商業施設や街中での音楽イベントは、日本では騒音の問題がネックになり、なかなか実施が難しいのが現状です。
でも実際は、主催者側も「なるべく良い音で観客に届けたい」という気持ちは強く持っています。とはいえ、スピーカーの“見た目の存在感”が心理的なハードルになることも多いです。大型スピーカーを積んだり吊ったりするだけで「音が大きすぎるのでは?」と不安がられてしまうこともあります。その点、CCLはコンパクトで圧迫感が少なく、音量・音質もしっかり確保できるため、景観に配慮が必要な場所でのイベントにぴったりです。商業施設でのイベントなど、設置に制限が多い現場こそ、CCLが真価を発揮できると感じています。
西川:他のお笑い系のイベントにも多数関わっているのですが、劇場の常設スピーカーだけでは音がまとまらないことも多く、持ち込みでしっかりと音を作る必要性を感じています。予算の問題もありますが、「せっかくならしっかりとした音で、より多くの人に届けたい」という思いは常にあります。その点で、コンパクトながら効率よく、確かな音が出せるCCLは非常に有効だと感じています。「この現場にしか使えない」というものではなく、幅広いシーンで柔軟に使える汎用性の高いシステムとして、使用の機会がどんどん増えていくのではないかと思います。
関山:ミュージカルの現場で使ってみたいですね。たとえばヘッドセットマイク十数波飛ぶようなかなり厳しい条件の現場などで、CCLを使用すれば状況が大きく変わるのではと期待しています。マイクの本数が多く、ハウリングマージンが求められるような環境は、CCLが第1候補になると思います。
大城:企業イベントでは、見た目の制約でスピーカーを置きたい場所に置けないことがしばしばあります。演者の真後ろに置かざるを得なかったり、会場の間口ギリギリに出さなければならなかったりと、設置面での制約が大きいんです。CCLのサイズ感で、あれだけ明瞭に音が飛ぶスピーカーは本当に貴重です。設置場所に制限がある現場でもフィットしやすく、弊社のように幅広いジャンルのイベントを手がけるチームにとって、非常に汎用性の高い製品だと感じています。
最後に、d&bに期待していることがあればぜひお聞かせください。
大城:d&b Soundscapeの新しいソフトウェア「Create.Control」が発表されましたよね。
弊社でもd&b Soundscapeを導入していますが、以前から「更に可能性を広げていくには、これまでd&bに触れたことのないユーザーにとっても扱いやすいより直感的なUIが必要だ」と感じていました。今回の発表で、それが実現されたことに非常にワクワクしています。また、今後CL-Seriesとしての展開や、次世代のポイントソーススピーカーの進化にも大いに期待しています。
大城音響事務所(Webサイト:https://ohshiro-sound.co.jp/)
PA業務を中心に、ライブコンサート、音楽フェスティバル、企業イベント、カンファレンス、ファッションショーなど、幅広い現場に対応する音響事務所。設立から10期目を迎え、確かな技術力と柔軟な対応力を強みとして、多様な現場のニーズに応えている。
大城 直哉(おおしろ なおや) /代表取締役
中学生時代から音響の現場に携わり、フリーランスとしての活動を経て、2016年に株式会社大城音響事務所を設立。音響分野への専門的な理解と実務経験を活かし、現場対応と機材管理の両面において事業をリードしている。
西川 巧(にしかわ たくみ) /サウンドエンジニア
専門学校在学中に代表の大城さんと出会い、現場アシスタントとしての経験を積んだ後、2018年に入社。スタッフが少なかった創業期から機材搬入・現場対応・オペレーションまで幅広く担当。
関山 佳介(せきやま けいすけ) /サウンドエンジニア
専門学校卒業後、新卒で入社。現場に深く関わりながら実践を重ね、スキルを磨いてきた。現在は、様々なニーズに対して柔軟に対応できるポジションを担っている。
