d&b A-Series、アテネのバスケットボールアリーナの厳しい音響要件に対応
ギリシャの屋内施設であるテレコム・センター・アテネは、同国最大の多目的アリーナです。さまざまなショーやイベントが開催されるほか、プロバスケットボールチーム「パナシナイコスBC AKTOR」の本拠地としても知られています。伸縮式観客席を備え、レイアウト変更にも柔軟に対応できるこの19,000席の会場では、音響カバレッジに対して非常に厳しい要求がありました。その要件に応えたのが、d&bのA-Seriesオーグメントテッドアレイスピーカーです。
カバレッジ、柔軟なゾーン制御、そして荷重制限
運営会社のWhite Veilが求めていたのは、イベントの種類を問わず観客エリア全体に明瞭で均一な音響カバレッジを提供できるシステムでした。それに加え、コートエリア、伸縮式スタンド、下層席、上層席といった各エリアを個別に制御できることも重要な条件でした。これにより、イベントごとに必要なエリアだけを運用することが可能になります。
また、レイアウト変更を迅速に行えるよう、ゾーン制御はプリセットシーンから簡単に呼び出せることが求められました。さらに、システム全体は屋根構造の荷重制限に対応できる軽量設計でなければなりませんでした。
こうした要件を満たすソリューションを実現するため、同社はアテネを拠点とするシステムインテグレーター兼AVスペシャリストのTelmacoに協力を依頼しました。そしてTelmacoは、d&bの製品であればこれらの課題に十分対応できると確信していました。
厳しいスケジュール
TelmacoのCEOであるヴァシリス・キリアジス氏は次のように説明しています。
「このシステムには、あらゆるイベントにおいて観客エリア全体へ十分な音圧レベル(SPL)を確保しながら、明瞭かつ均一なフルレンジの音響カバレッジを提供することが求められました。全座席の90%以上で平均100dB(A)を確保し、±3dB以内の均一性と37Hzから18kHzまでの周波数特性を実現する必要がありました。こうした出力性能と精密な指向性を、限られた構造荷重条件に対応しながら実現しなければなりませんでした。」
当初、このプロジェクトの完成は2026年夏を予定していました。しかし、同アリーナが2026年5月開催のEuroLeague Final Fourの会場に選定されたことで、完成スケジュールは前倒しとなりました。
構造物への負荷を最小限に抑えながら高い音響性能を実現するという難題に加え、プロジェクト期間が大幅に短縮されたことで、その難易度はさらに高まりました。
3DモデルとArrayCalc
このプロジェクトを実現するため、Telmacoは詳細な3Dモデルをd&bのArrayCalcソフトウェアへ取り込みました。これにより、d&bのEducation and Application Supportチームはサウンドシステムの設計を行うとともに、現地でのシステム調整や運用設定をサポートすることができました。
このサポートには、d&bのR1ソフトウェア上で必要となる各種運用シナリオの設定も含まれていました。
「ArrayCalcにより、目標達成に向けた明確な見通しを得ることができました」と語るのは、TelmacoのAVデザインエンジニアであるアンドレアス・ザンザス氏です。
「また、設置完了後のシステムチューニング作業の効率化にも役立ちました。」
システム調整サポートに加え、d&bのカスタムソリューションチームは、本プロジェクト専用の特注リギングフレームを製作しました。これにより、会場の構造上の制約やカバレッジ要件に合わせて、ラインアレイを最適な位置に正確に設置することが可能になりました。
システム構成
システムの中核となるのは、ALi60およびALi90で構成された14基のメインアレイです。これらは特注のd&bリギングフレームを用いてフライング設置されています。
その構成は以下の通りです。
・4基はアリーナ外周のコーナーエリアをカバー
・4基はバスケットゴール後方の可動観客席エリア向けに、通常より低い位置に吊り下げて設置
・4基はコートレベルのサイド席をカバー
・残る2基は競技エリアに向けて設置され、コートサイド席もあわせてカバー
さらに、10台のVi-GSUBをメインアレイ背後にカーディオイド構成でフライング設置しています。
また、上層席中央部およびコーナーエリア向けのディレイスピーカーとしてALi90とALi60を追加設置し、18台の8Sがバルコニー下の補助カバレッジ(アンダーバルコニーフィル)を担っています。
「A-Seriesの軽量性は非常に重要な要素でした」とザンザス氏は述べています。
「必要な音圧レベルや出力性能、指向性を実現しながら、屋根構造のリギング荷重および耐荷重制限を十分に下回るシステムを構築することができました。」
いつでも運用可能な状態へ
システム全体は、専用PC上のd&b R1によって制御されています。シナリオプリセットの呼び出しとシステムモニタリングの両方を管理しており、エンドユーザーが容易に運用できるようカスタムスナップショットも設定されています。さらに、本システムは既存の館内放送・アナウンスシステムとも接続されており、必要に応じて緊急放送信号を伝送できるようになっています。
Telekom Center AthensのCEOであるイリアス・ヴリシス氏は次のように語っています。
「新しいd&bシステムによって、アリーナの音響性能は大きく向上しました。優れた音質と会場全体にわたる均一なカバレッジを実現し、観客とパフォーマー双方の体験価値を大幅に高めています。」
