d&b Soundscapeがウエストエンドでメリーポピンズの魔法をマッピング。
P.L.トラヴァースの不朽の名作がミュージカル化され、誰もが愛する“スーパーキャリフラジリスティックエクスピアリドシアス”なナニーがウエストエンドのステージに帰ってきました。ディズニーがCGIやSFXを駆使した大予算の2018年ヒット作『メリー・ポピンズ リターンズ』に続き、ソーホーのプリンス・エドワード・シアターにこのミュージカルが登場したときには、世界中のファンは“ポピンズ体験”の期待に胸を膨らませました。
そんな期待に応えるべく、キャメロン・マッキントッシュが率いる制作チームは、ストーリー、歌、ダンスだけでなく、セットデザイン、照明、そして肝心のサウンドにおいても、劇場の観客に特別な体験をプレゼントしようと意欲旺盛に取り組んでいきました。
魔法のような音響体験を実現するために、東京で行われた『メリー・ポピンズ』のアジア・プレミアや、ヘンリー8世の妻たちを描いたヒットミュージカル『Six』でサウンドデザインを担当したサウンドデザイナー、ポール・ゲートハウス氏が起用されることになりました。
「私はセブ・フロストが指揮を執った『The Last Ship』(スティングが手掛けた2018年のミュージカル)などの作品で使用されていたSoundscapeの、サウンドによって創造的な可能性を広げ、観客、ステージ、オーケストラ、サウンドデザインを密接につなげる力について耳にしていました。
ゲートハウス氏は、グロスタシャーのナイルスワースにあるd&b audiotechnikの英国本社を訪れ、DS100シグナルエンジンの実地デモとSoundscapeの2つのソフトウェアツールキット、En-SceneとEn-Spaceについて詳しく説明を受けました。
夢のような大ヒット曲、親しみやすいソロ、魔法のような間奏などがならぶ『メリー・ポピンズ』は、サウンドデザイナーにとっては難しいながらも、腕の見せ所となる作品です。
ゲートハウス氏は次のように語ります。「Soundscapeはこの作品のクリエイティブな可能性を無限に広げてくれるものでした。12人編成のオーケストラの各楽器がピットのどこに配置されているかが、個別のオブジェクトとしてDS100に入ってきます」。
舞台上では、リアルな世界、たとえば暗くて煙たいエドワード朝のロンドンから、カラフルで鮮やかな『ジョリー・ホリデイ』、そして壮観なタップダンス『ステップ・イン・タイム』へと展開していきます」。
ゲートハウス氏は、d&bのArrayCalcシミュレーション・ソフトウェアで会場を構成した後、d&bチームとキャビネットを試聴して、完璧にマッチするラウドスピーカーを選択しました。
「360度システムを導入しました。おそらく劇場用としてはこれまでで最大規模のものだと思います」とゲートハウス氏。
「重量感、低域、ヘッドルームがあるので、壮大で温かみのあるサウンドを作れると同時に、きめ細かいサウンドも実現できます」
このショーのためにxS-Series、Y-Series、C-Series、E-Seriesラウドスピーカー、D20とD80アンプを含む全てのd&b機器を供給したのはロンドンのAutograph Sound社です。過去にリーズ劇場でSoundscapeを導入した経験があるAutograph社のアダム・ブルーム氏は「没入型オーディオの開発は業界や多くのデザイナーの間で大きな話題となっていて、私たちはこうしたシステムに強い関心を持っています」と言います。
「『メリー・ポピンズ』でのポールの決断は、リバイバル作品、観客をサウンド体験に引き込む新しい方法の模索、そしてショー全体におけるサウンドの重要性という観点から考えれば、完全に理にかなったものです。没入型サウンドという分野のリーダー的存在であるd&bは、Autographのような企業を大いにサポートし、ポールとチームの他のメンバーに活用方法や設計の面で優れたサービスを提供してくれました」