芸術としてのサウンド。 ベトナム人アーティストのPhạm Minh Hiếuが新しい展覧会でd&b Soundscapeを用いて境界を拡張。
今日、サウンドはそれ自体がパフォーマンスの1つの次元であり、観客と直接つながり、観客の芸術に対する認知力を高めます。d&b Soundscapeは現代アーティストのPhạm Minh Hiếuにとって、芸術的表現の器となりました。
Phạmは、ベトナムの現代美術文化の目覚めを表現するコラボレーションの1つを通じて、ハノイに拠点を置く新しいアートスペース「The Outpost」の除幕式のインスタレーションの作成を依頼されました。2022年11月29日から2023年2月28日まで展示されるこのインスタレーションでは、あらゆる年齢層やバックグラウンドの6人のベトナム人現代アーティストが集まっています。ここで彼らはベトナムの過去に敬意を示し、現在を認識し、未来を夢見ます。
Phạm Minh Hiếuの作品、「The Contemporary」は、来場者がPhạmの母国の芸術表現の歴史を旅する「総合インスタレーション」です。そこでは、ベトナム現代美術の風景を思い描く手助けをする「放浪者」たちの足跡が来場者を導きます。このインスタレーションではd&b Soundscapeが使用されており、人の目には見えない放浪者たちが展覧会を徘徊する音に命が宿ります。そうして彼らの存在が呼び起こされ、彼らの世界が、展覧会に実在する場所に重ね合わせられます。
ベトナムのハノイで生まれたPhạmは「現代の状況」を探求する作品で知られています。彼の芸術は、世界における一時性の概念に疑問を呈することを狙いとしており、現在というものの探求から意味を生み出す芸術の力が、文化と社会のより広い理解につながるかもしれないという想定に端を発します。Phạm Minh Hiếuはこれを、彼が「同時代性の複雑さを熟考し、撤回された現実を熟考する」住処である「総合インスタレーション」を舞台に実行します。
Soundscapeは、デザイナーが高解像度のサウンド体験を作成できるオーディオシステム・プラットフォームです。Soundscapeでは、オブジェクトベース・ミキシングによって、選択したサウンドデザイン・フィールド内でサウンドオブジェクトの定位とイメージングを行うことができます。またSoundscapeでは、屋内と屋外の両方で、エミュレートされた音響特性を変更あるいは作成することも可能です。d&b Soundscapeシステムは、DS100 Signal Engineと2つのソフトウェアモジュールーーオブジェクトベース・ポジショニング用のEn-Scene、ルームエミュレーション用のEn-Spaceーーで構成されています。
Phạmはサウンドオブジェクト配置ツールのEn-Sceneによって、最大64のサウンドオブジェクトを個別に配置し、移動させることに成功しました。観客は、この非線形の展覧会を通り抜けるときに、これらの空気のような存在を耳にするものの、目にはしません。Soundscapeはこのユニークな感覚体験で来場者を魅了し、他のアーティストの作品を介して彼らを導きます。そして、彼らが展示に関して複数の視点を得て、彼ら独自の「現代的であること」と「ベトナムの現代美術」の定義を考え出すように促します。インスタレーションは展示スペース全体を取り囲み、その根底となる、決定的に重要な、存在しながらも非存在的である独特の雰囲気を生み出します。
「総合インスタレーション」のコンセプトに加えて、GuoとPhạmはギャラリーの周りにトリガーを仕掛けて、インタラクティブ性と積極的な参加を促すスポットも設けました。Soundscapeを利用してデザインしたプリセットサウンドが用いられたこれらのトリガーは、訪問者とのさまざまな距離や彼らから来る音に反応し、ギャラリー体験を完全にイマーシブなものに変貌させました。ここでは、来場者の行動が聴覚的に置き換えられることもあるといいます。
Phạmは「放浪者たちを色々な方向に向けて極めて精確に移動させたかったのですが、それを可能にするのはSoundscapeだけでした」とコメントしています。「観客が音源の物理性と動きを認識して、それを追えるようにサウンドを動かせるシステムが必要でした。放浪者は目には見えませんが、私は、その存在を音で鮮やかに伝えたいのです。d&bにはそれを実現する力がありました」
Soundscapeを補完するために、チームはd&bのxS-Seriesも採用しました。目立たないキャビネットデザインのxSラウドスピーカーは、The Outpostのような現代アートスペースに最適です。ここでは柔軟性向上のために、回転式ホーンを使用してラウドスピーカーを任意の方向に向けることができます。同時に、カーディオイドサブウーファー技術によってシステムの裏側ではなく必要な箇所でだけ低音が再生されるようになっています。このセットアップは、システムが他のアートワークについて思いを巡らせている来場者の意識の邪魔をしないようにするのに役立ち、サウンドが再生されれば、再び簡単にそこにフォーカスを当てることができます。
d&bがベトナムでアートインスタレーションに取り組んだのはこれが初めてのことで、d&bチームはこのエキサイティングなチャレンジを非常に喜んで引き受けました。この類まれな展覧会はSoundscapeの境界を押し広げました。