808ナイトクラブ、ベルリン。大音量のビートと近隣への配慮。
伝説的なドラムマシンの名を冠したクラブが、静かな夜を目指しているとは思えません。Club 808という店名は、象徴的な存在であるRoland TR-808 Rhythm Composerに由来しており、その名に恥じない存在感を示しています。大音量のビートとエネルギッシュなサウンドが鳴り響き、リアーナ、プシャ・T、ジュース・ワールド、Apache 207といったアーティストの公演で連日ソールドアウトを記録しています。しかし、その舞台裏では綱渡りのような調整が求められています。クラブは、歴史的建造物を利用したショッピングモールBIKINI BERLINに隣接し、さらに25hours Hotelの真下にあります。ダンスフロアが熱気を帯びるその上階では、宿泊客が静かな休息を求めています。そこで必要とされるのが、スマートなサウンドデザインです。
シーンの設定
Club 808は、MMT Networkの音響専門家と協力し、さらにElektroakustik Neuenhagenの確かな技術を活用してシステムの導入作業を進めました。同クラブが選んだのはd&b audiotechnikの音響システムで、必要なエリアに正確に音を届けつつ、他のスペースへの音漏れを最小限に抑えるよう設計されています。
スタイリッシュなインテリア、多様な客層
Club 808では、インテリアアーキテクトのローラ・レイヴが、打ちっぱなしコンクリートやスチールに、柔らかなベルベットや木の質感を組み合わせた空間をつくり上げました。音楽が脈打ち、X字型のライトストリップがビートに反応します。テーブルサービスを備えたバーエリアではゲストがゆったりと過ごし、ダンスフロアでは体が自然と動き出します。そこに集まる人々は多様で、オープンで、エネルギーに満ちています。「私たちは、さまざまなシーンの人たちが集う場所を目指しています。ヒップホップやエレクトロが好きな人、クィアシーンの人たちもいれば、あのベルグハインに行くようなゲストもいます」と、Club 808のオペレーションマネージャーであるヤクブ・クライニクは述べています。「私たちのビジョンはシンプルです。音楽を通じて人々を結び付け、収益もあげられるガストロノミーコンセプトと音楽を融合させることです」
課題
相容れないもの:ビートとベッド
しかし、Club 808がオープンして間もなく、たとえ標準的な防音対策を施していても、ホテルの客室でゲストが眠るすぐ真下でパーティーを開催することが、いかに難しいかという現実が明らかになりました。
「ある夜、警察が外に来ていて、『今度は何だ?』と思いました」と、Club 808の技術・施設マネージャーを務めるベンジャミン・ベクタスは振り返ります。「低音が建物全体を伝わって上階に届いていたということがわかりました。最大の支柱が、ちょうどサブウーファーを積んでいる場所のすぐ後ろにあるのです。低周波音は、建物の間取りなどお構いなしに伝わってしまいます」
リミッターを使用すると踊るには静かすぎる
慎重に調整したリミッターを使っても状況はあまり改善しませんでした。「音量を基準内に収めるため、リミッターは常に上限ぎりぎり。しかしそれでは、クラブというよりラウンジのような雰囲気になってしまいます。音楽より会話のほうが目立ってしまう状態です。ダンスフロアで求められる雰囲気ではありません。音をちゃんと届ける必要があります」
見えないものをモデル化
ベンジャミン・ベクタスのチームはまず、音響を分離するために構造柱を浮かせる処理を施し、さらにすべての換気システムに防振対策を行いました。しかし、本当の転機となったのは、MMT Networkによる電気音響設計でした。同社のチームは、Club 808のその場特有の角度やコーナーを含めた、空間の完全デジタル音響モデルを構築したのです。
「Club 808の店内には、音を拡散させるオブジェクトが多く配置されており、それらを正確にモデル化する必要がありました」と、MMT Networkのメディア技術プロジェクトマネージャー、フェリックス・マイヴォルムは語っています。私たちは、低音域をシミュレーションするためにBEM(境界要素法)モデルを構築し、100 Hz以上の高周波についてはレイトレーシングプログラムで解析を行いました。こうしたモデリングによって、問題が生じるエリアから音圧を遠ざけ、逆に本来届けたい場所、つまりダンスフロアにしっかり届ける方法が分かったのです」
ソリューション
カーディオイドシステム。制御されたサウンド
指向性制御を実現するには、適切なサウンドシステムの選定が欠かせませんでした。今回のソリューションの中核となったのは、d&b audiotechnikのコンパクトな高性能 18S-SUB サブウーファー を用いたカーディオイドシステムです。
「カーディオイド配置にすることで、低音が全方向に広がるのを防ぐことができます」と、d&b audiotechnikのホスピタリティ部門グローバルセグメントマネージャー、ミヒャエル・キンツェルは説明しています。「サブウーファーを3台積み重ね、その中央の1台を後ろ向きに設置することで、低音域スタックの後方に出る不要な周波数を打ち消す仕組みです」
その結果、ダンスフロアでは力強く厚みのある低音を、ホテル側では静かな環境を両立できました。「クラブの上にあるホテルの客室で、23 dBという値を計測しました」と、技術マネージャーのベンジャミン・ベクタスは話します。「システムを最大出力にした状態でも、26 dBに収まっていました」
見えない、でも感じるサウンドシステム
クラブのサウンドデザインの魔法を生み出しているのは、6台の E8 ラウドスピーカー です。視界に入らないほどコンパクトでありながら、空間全体を圧倒する力強さがあります。「お客様からはスピーカーが見えません」とベンジャミン・ベクタスは語ります。「だから皆さん、『どこから音が出ているんですか?』と聞いてくるんですよ。それも体験の一部です。音楽が全身を包み込むのです」
ライブパフォーマンスやギグが行われるClub 808では、見た目も重要です。音が良く、見た目も美しいd&b audiotechnikのスピーカーは、ステージ上で存在感を発揮します。「私たちは、高品質で見た目にもクラブにふさわしいものを探しました」とベンジャミン・ベクタスは付け加えます。「ラウドスピーカーは、テクニカルライダーに載ったときにも目を引く必要があります」
システムを支えるのは、4台の 24S ポイントソーススピーカーと、 低音域用の ウルトラコンパクトB8-SUBが1台です。
本格的なクラブの雰囲気、音楽には一切の妥協なし
「Club 808は、新世代のナイトクラブを象徴しています。温かく心地よい雰囲気の中で、リアーナのような世界的スターが間近でパフォーマンスを披露するのです」とd&b audiotechnikのミヒャエル・キンツェルは語ります。「こうしたクラブで仕事ができるのは本当に楽しいです。本物の体験と、素晴らしいもてなし、そして高度な技術が融合している場所ですから」
結論
宿泊客には十分な休養を、クラブ来場者には興奮を
Club 808のベンジャミン・ベクタスによれば、d&b audiotechnikのプレミアムオーディオ技術への投資は確実に成果を上げているとのことです。「音が良ければ、長く滞在したくなります。開店から閉店まで過ごす常連客もいますし、次回も必ず戻ってきます」
Club 808 の来場者が最後に帰る夜明けごろ、上階のホテル宿泊客は静かにくつろいだ夜を過ごしています。
