MECCはコンベンションセンターをアップグレードしてその柔軟性を高め、Soundscape対応のアートハブが実現。

© Graham Chrimes

マッカイ(クイーンズランド州、オーストラリア)は、タウンズビルの南約380km、ブリスベンの北1,000km弱に位置します。公式には、マッカイがセントラル・クイーンズランドにあるのかノース・クイーンズランドにあるのかは誰にも定かではありません。これらの地域を定義する実際の線は地上には存在しないからです。ただ、熱帯地方にあることは確かです。マッカイは過去50年間にわたって急速に成長を遂げ、コミュニティの飛躍的な拡大に伴い1988年にはマッカイ・エンターテイメントセンター(MEC)がオープンしました。

座席数1,100、1階建ての傾斜ホールが入ったこの劇場はすぐさまノース・ニューサウスウェールズからファー・ノース・クイーンズランドのケアンズにまで広がる一連の舞台芸術センター、「ステージ・クイーンズランド」(以前の NARPACA)の重要な一部となりました。これは、オーストラリアのほぼすべての地域ツアー活動を受け入れるサーキットとして存在してきました。



そしてその後、コンベンションスタイルの建物で劇場を補完することが必要だという考えにいたり、2008年にマッカイ・エンターテイメント&コンベンションセンター(MECC)が着工されます。最終的には、ホールAとホールBの2つのスペースに分割できる、1つの大きな平面の会場が完成しました。

そして2017年、継続的な使用による負担と多湿な気候がPAシステムにダメージを与えていたことから、MECCの音響責任者であるマーク・ブレーク氏は、複合施設全体のサウンドリインフォースメント装置の交換に着手しました。

MECCは当初からd&bのパートナーであるNAS Solutions社と緊密に連携して、コンベンションセンターと劇場の両方に可能な限り適切に対応できるネットワークシステムを設計することにより、2つの会場で共有できるようなコンポーネントが重複してしまうことを回避しました。

マークにとって、真の課題は未来です。彼は、現時点で最善と考えられているが、急速に陳腐化するおそれがあるものを選択するのではなく、10年後に技術的に何が予想されるかを見極めることを非常に重視しています。

イマーシブな音響は未来です。私たちはd&b Soundscapeシステムが長期的な投資であることを理解しています。マーク・ブレーク氏 MECCの音響責任者

ブレーク氏は、Soundscapeのようなイマーシブな音響システムが例外的な存在ではなく標準になると固く信じ、あらゆる種類のパフォーマンス、たとえば音楽、演劇、さらには豪華な企業イベントでも、将来的にはプログラミングがプロデューサーにとっての優先事項になり、そこではイマーシブな音響が頻繁に用いられるだろうと考えています。

MECCは当初からNAS Solutions社と緊密に連携して、コンベンションセンターと劇場の両方に可能な限り適切に対応できるネットワークシステムを設計することにより、2つの会場で共有できるようなコンポーネントが重複してしまうことを回避しました。システム設計が完成し、プロジェクトの第1段階である劇場設置が2018年にHMEによって成し遂げられました。

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次に第2段階が始まり、Diversified社がコンベンションセンターならびに、ネットワークを介してすべてを結び付けるという重要な任務の契約を獲得しました。MECCの過密スケジュールに対処しながら、プロジェクトを完了するための限られた機会を活用することが課題になりました。「時折、少しナーバスになって、こんな短い時間枠でうまくいくだろうかと疑問に思った人もいたかと思います」とブレーク氏は認めます。Diversified社は非常に高い評価を得ています。「Diversifiedはとても要領がよく、問題を迅速に解決してくれました。私が何かを違うやり方で行いたいと思ったときでも、彼らは決してそれに疑問を持たず、ただ仕事を進めてくれました」

そうしたタイトな時間枠の原因についてDiversifiedは説明しています。「最大の問題は、2021年のスエズ運河閉塞の影響でした」とホッジ氏は言います。「これにより、d&bからの出荷が遅れ、当初の計画通りにPAを設置できなくなり、イベントの多い時期に到着しました。プロジェクトを予定通りに完了するには、スケジュールがぎっしり詰まったカMECCのレンダーに対処する必要がありました」。そう、犬がプロジェクト計画書を食べてしまうよりはずっといいでしょう。

劇場はむしろ伝統的なパフォーマンス空間ですが、音響は、追加されたSoundscapeの機能を活用できるような真に現代的な構成となります。Y-Seriesラインソース・ラウドスピーカーの左右とセンターのスピーカー配列が、センターアレイの両側にフライングされたカーディオイドVi サブウーファー、左右の1対のB22フロアサブウーファー、そしてステージの縁のフロントイメージングフィルとして機能する6本のE6ラウドスピーカーによって拡張されています。 E6は、オーケストラピットの役割も果たすステージエプロンがメインステージと同一平面に上げられる場合は、撤去することが可能です。まれに、講義やビジネスプレゼンテーションなどのイベントにおける最前列のフィルとして、上げられたエプロンの前縁の周りに配置されることもあります。



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コンベンションセンターは、ホールAとホールBに分割できる巨大な平面の床のスペースです。ただし、ここに設置されている最新式PA設備一式のことを考えると、「ホール」も「コンベンションセンター」も、ある意味誤った名称であるかもしれません。左右のフライングアレイ、1対のフライングサブとフロアサブ、左右のフロントイメージングフィル、そして2つのセンターフィル・ラウドスピーカーからなる完全なシステムが組み合わされて、すべてを完全にカバーする見事なコンサート・リグになります。ホールBのスペースが確保されている場合(可動式の隔壁を配置することにより2つの会場を同時に使用)、空間の中ほどまで降ろした1対のフライングディレイスピーカーをホールBのメインPAとして使用できます。ポータブルD&Bシステムは小規模イベントの現場でより実用的なソリューションとなります。



すべてがネットワーク化されており、ブレーク氏と彼のチームはR1ソフトウェアを介して、劇場、コンベンションセンターのホールAとB、メインロビーを含むシステム全体を必要なバリエーションに設定することができます。これはとても便利なことです。


MECCのさまざまなスペースとその用途を考慮すると、これはシステムの革新と設計における偉業であり、最小限のプロフェッショナルな労力によって複雑で重要なプロジェクトを完了するためにNASとDiversifiedの両社が成し遂げた大きな成果です。

ダグ・プリングル氏が率いるNASのコミッショニングチームはパーフェクトでした。空間の音響には多くの課題がありましたが、NASはこれらを克服して、美しい音響システムを提供することに成功しました。
ブラッド・ホッジ氏 Diversified社
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ブレーク氏は、Soundscapeの可能性やイマーシブな音響を今後の作品にどのように組み込めるかについてのワークショップを地元の音楽団体や演劇グループとともに開催し、今も未来を見据え続けています。彼は、イマーシブな音響設計が採用されているツアー作品がやって来るのを待つつもりはありません。このシステムは、それに大いに関心を抱き、その可能性を最大限に活用するすべての人のためにあります。MECCの全員と同じく、ブレーク氏の目標は、マッカイ・エンターテイメント&コンベンションセンターを業界のリーダーとして、そしてまたコンベンションとツアーパフォーマンスの両方で最も人気のある会場の1つとして確立することです。それはMECCのビジョン、NAS Solutions、Diversified、そしてSoundscapeの功績のおかげで、すでに十分かつ本当の意味で達成されています。

このストーリーの複製を許可してくれたNAS / AV Technology Asia Pacific Magazine誌に感謝いたします。

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